認知症を伴った高齢者の転倒とその予防

認知症の高齢者は体に麻痺がなくても転びやすいです。

理由は様々ですが、①加齢による下肢筋力、バランス機能の低下、②脳の病変による運動機能障害、③認知症特有の行動面の問題(突発的な行動など)、④服用薬の副作用(めまい、ふらつき)、など複合的な要因が重なるためです。

認知症高齢者の転倒リスクは健常高齢者の約8倍。転倒すると頭部・顔面の打撲や手足の骨折など、重篤な症状を呈することが多く、しかも受傷からの回複率が低いために寝たきりになるリスクが高くなります。

転倒の要因は、①内因性リスク(本人の心身の問題)、②外因性リスク(生活環境的要因。室内の段差、傾斜、滑りやすい床面など)に大別できます。

在宅の方の転倒予防を考える場合、まず外因性リスクの見直しが必要です。たとえば、トイレでの転倒要因は床面の濡れ、狭い空間での衣服の上げ下げ、便座への着座・立ち上がり、方向転換などがあり、それらの動作を阻害する要因がないか、あらためてチェックしてみましょう。浴室では滑りにくいマットを使用し、浴槽へのまたぎなどの入浴動作の安全性を確認しておくことが重要です。

転倒が契機となってQOL(生活の質)が急変することがないよう、日頃からの家族の見守り・目配りが大切です。

言語聴覚士