たかが運動、されど運動

〝運動後 焼き肉ラーメン 逆効果〟。高齢社会になってますます運動の必要性が強調されていますが、「高齢者の運動」には2つの側面、①健康維持・増進のための運動、②病後の症状回復のための運動…があげられます。

前者はウォーキングや水泳、あるいは認知症予防のためのコグニサイズ。後者は脳血管障害のリハビリ、糖尿病者の運動療法等が代表例です。

最近、認知症の研究から「認知症の人は片足立ちができない人が多い」、つまり、記憶障害や認知機能障害のみならず、身体的なバランス能力も早期に低下することがわかりました。

こうしたことから、片足立ちができない人は転倒・転落事故のリスクや認知症や脳血管障害の予備軍、あるいはその入り口にいる可能性がある人とみなされます。

ちなみに、65歳以上で片足立ちが40秒以上できる人は健康、20秒以下の人は何らかの問題がある人とされます。1回60秒、それを毎日3~4回繰り返すことが健康への道と研究者は提案しています。何かにつかまっておこなってもOK。今日から実行してはいかがでしょうか。

言語聴覚士

認知症を伴った高齢者の転倒とその予防

認知症の高齢者は体に麻痺がなくても転びやすいです。

理由は様々ですが、①加齢による下肢筋力、バランス機能の低下、②脳の病変による運動機能障害、③認知症特有の行動面の問題(突発的な行動など)、④服用薬の副作用(めまい、ふらつき)、など複合的な要因が重なるためです。

認知症高齢者の転倒リスクは健常高齢者の約8倍。転倒すると頭部・顔面の打撲や手足の骨折など、重篤な症状を呈することが多く、しかも受傷からの回複率が低いために寝たきりになるリスクが高くなります。

転倒の要因は、①内因性リスク(本人の心身の問題)、②外因性リスク(生活環境的要因。室内の段差、傾斜、滑りやすい床面など)に大別できます。

在宅の方の転倒予防を考える場合、まず外因性リスクの見直しが必要です。たとえば、トイレでの転倒要因は床面の濡れ、狭い空間での衣服の上げ下げ、便座への着座・立ち上がり、方向転換などがあり、それらの動作を阻害する要因がないか、あらためてチェックしてみましょう。浴室では滑りにくいマットを使用し、浴槽へのまたぎなどの入浴動作の安全性を確認しておくことが重要です。

転倒が契機となってQOL(生活の質)が急変することがないよう、日頃からの家族の見守り・目配りが大切です。

言語聴覚士

認知症を理解しよう

本人が、「自分は認知症ではないか」と気づくのが早いか、家族が気づくのが早いか、いずれにしても今まで当たり前にできていたことが困難になって日常生活に支障をきたす事態は深刻である。物忘れがひどくなり、家族・知人の名前が思い出せない、大事な物をどこにしまったか忘れた(しまったこと自体忘れている)、などさまざまな症状が本人を困惑させるのが認知症である。

認知症には、①記憶障 害が主症状であるアルツハイマー型認知症、②発病初期には記憶障害は目立たず、“赤い虫がたくさん見える“といった幻視や歩行障害を特徴とする「レビー小体型認知症」、③人格障害、社会的なルール無視(コンビニの商品を勝手に持ち帰る、店内で食べる)を特徴とする「前頭側頭型認知症」、④脳血管障害が原因である脳血管性認知症などさまざまな特徴をもつタイプがある。

認知症治療は早期発見が重要とされるが、本人や家族が認知症を疑いつつも、医療機関や行政の相談機関を訪れるまでに一年以上かかるという報告がある。まずは早めにかかりつけ医に相談、本人の納得が得られるならら「物忘れ外来」「神経内科」を受診し、その後の対策を考えるべきでしょう。

言語聴覚士