話すことと食べること

近年、在宅高齢者の構音機能(話すこと)と摂食・嚥下機能(食べること)との関連性に関心が集まり、【10秒間に「パ、タ、カ」それぞれを何回発音できるか】という介護保険の口腔機能の評価項目があります。

高齢者の構音機能と誤嚥リスクの関連性を研究した報告によれば、「パタカ」を滑らかに繰り返し発音できる人は食事動作に問題はなく、繰り返し発音できない人はむせ込む・タンがからむ等のトラブルが多いと推測されています。声を作り出す声帯は、同時に安全に食べ物を呑み込むための機能(声門閉鎖)も果たしているからでしょう。

昨年の北日本新聞記事によると、モチをのどに詰まらせて亡くなった65歳以上の661人(2018・2019年、消費者庁調べ)のうち、男性は477人(72%)、女性184人(28%)。圧倒的に男性が多く、このデータを分析した専門家は、女性は高齢になってもよくしゃべり、口を動かすので嚥下機能がいつまでも保たれるためではないかと述べています。

たまには呪文のように「パタカ、パタカ、パタカ」と繰り返してみませんか。

言語聴覚士

口腔乾燥と唾液の関係

寒い時期におきる〝かくれ脱水〟や口腔乾燥(ドライマウス)は高齢者特有の症状ではないですが、毎年、乾燥する季節になると不快な症状に悩まされるお年寄りは多いです。口腔乾燥は文字通り「口の中が乾く」ことですが、これは何らかの原因で唾液が不足あるいは減少することで生じる症状であり、①唾液腺の機能の低下・障害、②加齢に伴う唾液分泌量低下や薬剤の副作用(春先に多い花粉症治療薬も含まれる)などが挙げられます。

唾液が少なくなると、唾液による洗浄作用が弱まり、口の中の汚れが残りやすくなります。こうした状態を放置しておくと、虫歯や歯周病発症のリスクが高まります。予防法としては、「「よく噛んで食べる」、「人と会話をする」、要するに「よく口を動かすこと」が重要。日ごろから「こまめに水分補給し、口の中の潤いを保つ」、「うがいの回数を増やす」、「人と話す」などを実践していれば防げます。

また、「唾液腺マッサージ」(耳たぶに近い頬の部分や下あごを指先でマッサージする)によって、人為的に唾液を出させる方法もあります。

言語聴覚士

栄養とリハビリ

病後に日常生活をスムーズに送るためには、リハビリが重要だということはよく知られています。一方で、リハビリを成功させるために食事がとても重要だということをご存知でしょうか。

栄養状態が悪いなかで積極的なリハビリを行うと、機能が向上するどころか、逆に体力や筋力を失い、日常生活動作の低下を招いてしまいます。このようなリハビリと栄養の関係は「リハビリテーション栄養」という概念として、その重要性が注目を浴びています。

食事から必要な栄養を摂ることは、健康な時は容易でも、病後の低栄養状態では難しい場合が多いです。さらに食事というのは、長い人生のなかで形成される個人の価値観に左右されます。1日2食で十分という方もいれば、菜食中心の考え方も。食事の価値観の違いは、特に高齢者の低栄養を招くので要注意です。

リハビリは自分自身に向き合うことであり、同様に、栄養不足を改善するために食事を意識することはとことん自分に向き合うことになります。リハビリを行う際はぜひ一度、ご自分の栄養状態についても考えてみてください。

言語聴覚士

お雑煮をおいしく、安全に

毎年、正月そうそう雑煮のモチをのどに詰まらせて救急車搬送、という緊急事態が全国で起きます。のどの奥には肺につながる気管の入り口がありますが、そこに食べ物が誤って入り込むと、入り口が塞がれてしまいます。結果、呼吸困難となり、体内に酸素が供給されなくなると、わずか数分で脳が大きなダメージを受け(脳死)、最終的に死に至ります。
楽しいはずのお正月の一家団欒の場にパニックをもたらす窒息事故を防ぐ方法はあるのでしょうか。おモチの特性などから、次の4つがポイントとなります。
①お雑煮は冷めないうちに食べる
②小さく切ったおモチをよく噛んで呑み込む
③丸呑みはしない
④家族と一緒に食べる(ご高齢の方は一人のときは避ける)
窒息事故の犠牲者の多くが八十才以上の高齢者で、しかも男性が圧倒的に多いそうです。自分は大丈夫と思っていても油断大敵です。
最近は、口の中の粘膜にくっつきにくい小麦モチや粘着性の弱い切り餅などが市販されています。安全に、楽しくお雑煮を食べて新年を祝いましょう。
言語聴覚士

言語障害について

脳血管障害(脳梗塞・脳出血)後の後遺症で①構音障害②失語症と呼ばれる症状が出ることがあります。会話が不自由な点では同じ様な印象ですが、症状や原因は異なります。構音障害では、正しい言葉を選択し話すことは出来ますが、口や舌といった発声発語器官を上手く動かす事が出来なくなり、声が出しにくく呂律が回らず、正しい発音が出来なくなります。失語症では、脳にある言語中枢がダメージを受け、思っている言葉が話せなくなったり、聞いた言葉が理解出来なくなったりします。脳卒中の後遺症では言語障害と同時に身体が思い通りに動かなくなる運動障害や嚥下障害(飲み込みが悪くなる)が伴う事があります。以前、普通に出来ていたことが出来なくなり、不安やストレスを感じ、話をする機会の減少も考えられます。こちらから話しかける時には、短い文でゆっくりはっきりと、必要ならジェスチャーや絵なども使用し、視覚や感覚などにも訴えかける方法をとり、聞くときには、急がさず本人がゆっくりと話せる雰囲気を作るなど工夫し、その人に合った方法でのコミュニケーションを取る様にして下さい。
言語聴覚士

口臭について②

誰もが気になる口臭、その原因には生理的口臭と病的口臭があります。生理的口臭とは、食べ物やタバコ、アルコールなどによって生じる臭いです。
なかでもニンニク・ネギ・ニラ・ラッキョウなどは臭いを発しやすい食べ物です。特にニンニクは腸から吸収された成分が血液中に入り、体中を回って肺から息として吐き出されるため、いつまでも臭いが残ります。またアルコールも本人にはわかりにくいのですが、強い臭いが漂います。ニンニクやアルコールの臭い解消には、牛乳が効果的ですので試してみてください。
また小田原名産の梅干しやレモンにも、食べ物の臭いを薄める効果があります。次に病的口臭とは、口の病気(虫歯、歯周病、口内炎)、鼻やのどの病気、胃腸の病気、呼吸器の病気、糖尿病、肝臓病、腎臓病、癌などが原因の口臭です。ですがこうした病気のなかでも最も口臭の原因となりやすいのは、やはり虫歯と歯周病です。口臭が気になったら、まずは歯磨き。1日3回食後の歯磨きをするのが原則ですが、日中磨けない人は朝晩は必ず歯磨きしましょう。とりわけ細菌が繁殖しやすい寝る前の歯磨きはしっかりと。
理学療法士

口臭について①

ヒトの鼻は、「自分の口臭には気づきにくいが、他人の口臭は気づきやすい」構造になっている。さらに、口臭がある人に対して、たとえ家族であってもそれを指摘することには遠慮や心理的抵抗があり、そのまま放置されてしまうことが多い。口臭がひどい場合、むし歯や歯周病、あるいは糖尿病、消化器系のガンなどの病気が原因である場合もあり、放置しないで医療機関を受診することが望ましい。
口臭には、①生理的口臭(健康な人にも)、②外因的口臭(タバコ、酒、ニンニクなど)、③病的口臭(むし歯、歯周病、口腔以外の病変)がある。高齢者で義歯を装着している場合、義歯の管理がうまくできていないと義歯特有の口臭、さらに、舌苔(舌の表面の粘着物)由来の口臭もあるので注意が必要である。
口臭の除去法に特効薬はないとされるが、食後のうがい、歯ブラシによる歯磨き、義歯の清掃、舌苔の除去などの機械的清掃が最も効果的であり、必要に応じて、適時、消臭剤を使って口腔内を清潔に保つことが大事である。
言語聴覚士

嚥下障害について

「誤嚥性肺炎について」
誤嚥性肺炎とは、唾液や食べ物に含まれた細菌が気管に入ったことにより引き起こされる肺炎の事です。①食べ物や水分が飲み込みにくい②口から食物がこぼれる③口の中に食べ物が残っている④よだれが出る⑤口が渇く⑥食事の時間が前より長くかかる⑦食後に声がガラガラになる⑧飲み込んだ際にムセたり咳が出るなどの症状が認められた場合には、嚥下障害(食べること、飲み込むことの障害)が疑われます。これらの症状は食事が上手く食べられない、体重が減っていくなどと合わせて誤嚥性肺炎を起こす前のサインとも考えられるため、注意が必要となります。それと同時に、口腔内を清潔に保つ・逆流を防ぐ(食後はすぐに横に ならず体を起こし、頭を高い位置となるようにする)・嚥下反射を改善する(食事に必要な口・舌・頬の筋力を刺激する)などが予防方法となる為、これらを心がけ、より良い食生活と健康的な生活を送るようにしてください。
言語聴覚士